第4部 目的別・コミュニティの種類と作り方 Lesson 26 / 40

地域・地方創生/共創(商品開発)コミュニティの作り方

地域の人・事業者を巻き込む場、顧客と商品を一緒に作る場。地域資産や共創を生む、地方創生・共創型コミュニティの作り方を解説します。

地域を盛り上げたい、顧客と一緒により良い商品をつくりたい。こうした願いに向くのが、地域・共創型コミュニティです。地域の人や事業者を巻き込む場、あるいは顧客と商品を一緒につくる場をつくり、関わる人自身が当事者になることで、一人では生めない価値を形にします。

この型の核心は、「お客様」と「つくり手」の間にある壁を取り払うことにあります。ふつう、商品は企業がつくり、顧客はそれを受け取るだけです。しかし共創型では、その顧客が企画に加わり、意見を出し、試作に立ち会う。すると不思議なことが起きます。自分が関わった商品には愛着がわき、人は「これは自分たちのものだ」と感じて、頼まれなくても周囲に広めてくれるのです。地域も同じで、住民が「やらされる」のではなく「自分たちでつくる」側に回った瞬間から、その場は他人事でなくなります。共創とは、価値を届ける相手を、価値を一緒に生む仲間へと変える発想なのです。

私自身は山口県下関市の出身で、地方の現場を身近に見てきました。よく「地方には人がいない」「若い人が出ていってしまう」と言われますが、実際に足を運ぶと、人がいないというより、つながる導線と、続けて集まる場が不足しているだけだと感じます。祭りや商店街の催しには驚くほど人が集まるのに、それが単発の「点」で終わり、翌週にはまた元の静けさに戻ってしまう。イベントは点、コミュニティは線です。共創型コミュニティは、その一度きりの盛り上がりを、関わり続ける関係の線へと変えていく試みだと考えると、地方における意味がはっきりしてきます。都会のように人の数で押し切れないぶん、少ない人が深く関わり合う地域や共創の場は、むしろ持たざる者にとっての強力な武器になります。

参考:総務省「地域コミュニティに関する研究会 報告書」では、つながりの希薄化が進むなか、居場所づくりや共助を担う地域コミュニティの役割が重視されています(出典:総務省)。行政・地域ぐるみの動きは、共創型コミュニティの追い風です。

向いている企業

地域に根ざした事業や、顧客の声を商品に反映したい事業に向いています。当事者を巻き込む役割を設計できるほど、共創が動き出します。

観点向いている向きにくい
目的地域活性・共創がある短期の販売のみ
関わり方当事者を巻き込める一方的に届けて終わり
接点オフラインの接点がある接点をつくりにくい

顔の見える接点があり、関わる人に役割を渡せるほど、共創は前に進みます。ここで気をつけたいのが、「巻き込む」と「利用する」を取り違えないことです。共創を掲げながら、実際には企業の都合のいい宣伝役として住民や顧客を使おうとすれば、相手はすぐに見抜きます。当事者になってもらうとは、意思決定の一部を本当に手渡すということです。決めるのは結局こちら、では人は当事者になれません。多少やりにくくても、相手の意見が実際に形に反映される余地を残す。その誠実さがあってはじめて、共創は掛け声で終わらず動き出します。

主要KPI

地域・共創型は「どれだけ巻き込めたか」「実際に形になったか」で見ます。参加する人・事業者の広がりと、そこから生まれた成果を段階で追います。

巻き込む 住民・事業者 出し合う アイデア・役割 形にする 商品・実装 成果が地域に還り、次の参加を呼ぶ
図:巻き込み・アイデア・実装が地域に還る共創の循環

代表的なKPIは、参加する事業者や住民の数、共創プロジェクトの数、そして実際に実装されたアイデアの数です。集まった人数だけでなく、そこから何が形になったかまでを見ます。とりわけ大切なのが、最後の「実装されたアイデアの数」です。共創の場でありがちな失敗は、意見はたくさん集まるのに、何一つ形にならないまま立ち消えになることです。せっかく声を出したのに何も変わらなければ、参加者は「言っても無駄だ」と感じ、二度と本気で関わってくれません。小さくてもいいから、出た意見が実際に形になる。その手応えこそが、次の参加を呼ぶ最大の燃料になります。数より、一つでも確かに実現させることを重く見てください。

作り方のポイント

オンラインだけで完結させず、オフラインの接点を持つことが要になります。顔を合わせる場があると、当事者意識が育ちます。そして、参加者に「見る側」ではなく「つくる側」の役割を渡すこと。意見を出す、企画に加わる、試作を試すといった関わりが、共創を前に進めます。

なぜオフラインの接点がこれほど効くのか。画面越しのやりとりは便利ですが、どうしても「サービスの受け手」と「提供者」という関係が残りがちです。ところが同じ場所で顔を合わせ、一緒に手を動かし、同じものを食べたり試作を囲んだりすると、その線が溶けて「一緒にやっている仲間」という感覚が芽生えます。地域や共創の場では、この身体をともにする体験が、何十回のオンライン投稿よりも強く人を結びつけます。だからこそ、拠点となる小さな居場所——いつもの集会所でも、店の一角でもかまいません——を一つ持っておくと、活動の芯が定まります。人はイベントの内容以上に「またあそこに集まれる」という安心感に惹かれて戻ってくるものです。オンラインは日々のつながりを保つ糸として、オフラインは関係を太くする節目として、両方を組み合わせるのが理想です。

役割を渡すときのコツは、いきなり大きな責任を負わせないことです。「何でも自由にやってください」と丸投げされると、多くの人は戸惑って動けません。最初は「この試作品を使って感想をひとこと」「この案のどちらがいいか選ぶ」といった、小さくて具体的な関わりから始めるのがよいでしょう。小さな一歩を踏み出して「自分の声が届いた」と感じられれば、人は次にもう少し大きな役割を引き受けたくなります。当事者意識は、責任の重さで生まれるのではなく、「関わってよかった」という手応えの積み重ねから、少しずつ育っていくものです。

もう一つ、地域・共創型で陥りやすい落とし穴に触れておきます。それは、行政の補助金やイベント予算に運営を寄りかからせてしまうことです。補助金は立ち上げの燃料としては有効ですが、そこに依存すると、予算がついた年だけ盛り上がり、切れた途端に場が消える、という「点」の繰り返しに逆戻りしてしまいます。目指すのは、お金がなくても人が集まりたくなる関係と文化をつくること。補助金は、その関係を育てる時間を稼ぐための一時的な支えにすぎない、と割り切っておくと判断を誤りません。同じように、地元の有力者や一部の熱心な人だけで回してしまうのも危うい兆候です。特定の誰かの熱量に依存した場は、その人が疲れたり抜けたりした瞬間に止まります。役割を少しずつ分散させ、「あの人がいなくても回る」状態に近づけていくことが、続く共創の条件になります。

なお、運営側が気負いすぎないことも大切です。共創とは、運営が完璧なお膳立てを用意して参加者を「もてなす」ことではありません。むしろ、少し余白を残し、参加者が手を出したくなる隙をつくっておくくらいがちょうどよいのです。運営が頑張って作り込むほど、参加者は「お客さん」の位置に固定され、当事者になる出番を失います。運営が頑張りすぎないというのは手抜きではなく、参加者が主役になる場所をあえて空けておく、共創ならではの設計思想なのです。

共創は、巻き込む相手を当事者に変えたときに動き出す。

成果が地域や顧客に還ると、それがまた次の参加を呼びます。一人では生めなかった価値が、関わる人の数だけ広がっていきます。ここまで第4部では、目的別に六つの型を見てきました。大切なのは、どれか一つを正解として選ぶことではなく、自社の課題に照らして「いま最も切実な一つ」から小さく始めることです。器は共通ですから、一つの型で運営が回り始めれば、あとから隣の目的へと中身を広げていけます。次の第5部からは、こうした型を実際に立ち上げ、続けていくための具体的な設計と運営の技術に入っていきます。

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株式会社AI Docks 代表 松永勇樹
株式会社AI Docks 代表取締役 /「コミュニティ2.0」提唱者

松永 勇樹

150名+ノーコードサロン運営
50件+場づくりの相談実績
多業種法人コミュニティ支援

150名以上が参加するコミュニティを自ら運営する現役オーナー。AIを活用し、中小企業のコミュニティを「立ち上げ」から「運営」まで一気通貫で伴走支援しています。集客・顧客定着・採用に効く"稼ぐコミュニティ"を、設計から収益化まで一緒に形にします。

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