第4部 目的別・コミュニティの種類と作り方 Lesson 25 / 40

趣味・関心でつながるコミュニティの作り方

好きでつながる場は、熱量が何よりの資産。趣味・関心を軸に、自然と発言と交流が生まれるコミュニティの作り方を解説します。

同じものを好きな人が集まる場には、独特の熱量があります。趣味・関心型コミュニティは、共通の「好き」を軸につながる場です。運営が盛り上げなくても、参加者が自分から発言し、交流する。この自然に生まれる熱量こそが、他では得がたい資産になります。

この「熱量」は、お金では買えないという点に大きな価値があります。広告は費用をかければ届く相手を増やせますが、誰かの「好き」という気持ちは、いくら払っても外から注ぎ込むことはできません。それは参加者の内側からしか湧いてこないものだからです。だからこそ、すでに熱を持った人が集まる場は、他社が簡単には真似できない資産になります。ただし裏を返せば、運営が主導権を握りすぎて、その内側の熱を管理しようとした瞬間に、熱は冷めてしまう。趣味・関心型の難しさと面白さは、この「つくれないものを、どう育てるか」という一点にあります。

向いている企業

明確な関心テーマを持つ商材や、ファン層のいるブランドに向いています。売り込みの場にせず、純粋に「好き」を語れる場をつくれるかが分かれ目です。

観点向いている向きにくい
テーマ語りたくなる関心がある関心が分散している
参加者すでに熱量のある層がいる関わる動機が薄い
運営姿勢売り込みを前に出さない販促を主目的にする

語りたくなるテーマと、すでに好きな人がいるほど、場は自走しやすくなります。ここで多くの企業が悩むのが、「趣味の場が、はたして商売につながるのか」という点です。売り込みを前に出せない以上、直接の売上には結びつきにくい。だからこそ、この型は目先の販促としてではなく、ブランドへの愛着を長い時間をかけて育てる投資として捉えるのが正解です。純粋に「好き」を語れた場所への信頼は、やがて「この会社の商品なら買いたい」「この会社を応援したい」という気持ちに静かに変わっていきます。急いで刈り取ろうとせず、熱量そのものを大切にすることが、結果的にいちばんの見返りを生みます。

もう少し具体的に思い描いてみましょう。たとえば、こだわりのコーヒー豆を扱う小さな焙煎所が、「おいしい淹れ方を語り合う」場をつくったとします。そこでは、自分の抽出のコツ、お気に入りの器具、失敗した話などが自然に飛び交います。焙煎所はときどき豆の産地の話を投げるくらいで、基本は参加者同士の会話が主役です。誰も「うちの豆を買ってください」とは言いません。それでも、毎日その場で仲間とコーヒーの話を楽しむうち、参加者にとってその焙煎所は「ただの店」から「自分の居場所を用意してくれた存在」に変わっていきます。次に豆を買うとき、どこで買うかを迷う理由はもうありません。売り込まないからこそ選ばれる——趣味・関心型の逆説的な強さは、ここにあります。

主要KPI

趣味・関心型は「どれだけ活発か」を見ます。特定の人だけが投稿するのか、多くの人が発言しているのか。参加者主体で動いているかを、数字で確かめます。

共通の 関心 熱量が中心から周囲へ広がる
図:共通の関心を核に、発言と交流が外へ広がる

代表的なKPIは、投稿数や発言する人の数、イベントへの参加率、そして継続率です。総量だけでなく、発言する人の裾野が広がっているかを重視します。ここで一つ、見落としてはいけないのが「見ているだけの人(ROM)」の存在です。趣味の場では、自分から投稿する人はごく一部で、大半は黙って眺めているのが普通です。投稿数だけを見て「盛り上がっていない」と早合点すると、実は静かに楽しんでいる多数を見誤ります。発言者の裾野が少しずつ広がっているか、そして見ているだけの人がイベントなどでふと動いてくれるか——こうした変化のほうが、場の健やかさをよく映します。全員に発言を求めず、それぞれの関わり方を認めることが、趣味の場では特に大切です。

作り方のポイント

まず、参加者が語りたくなる共通の関心テーマを絞ります。そのうえで、運営がすべてを企画するのではなく、参加者主体の企画が生まれる余白を残します。誰かの投稿に反応が集まり、そこから新しい交流が生まれる——この連鎖が熱量を保ちます。

とはいえ、立ち上げの初期だけは例外です。まだ人も投稿も少ないうちに「参加者の自主性に任せる」と手を引いてしまうと、場は静まり返ったまま動き出しません。誰もいない部屋で最初に口を開くのは、誰にとっても勇気がいるものです。だから最初のうちは、運営が率先して話題を投げ、どんな小さな投稿にも丁寧に反応し、「ここは発言していい場所だ」という空気を体を張ってつくります。そして人が増え、参加者同士のやりとりが生まれ始めたら、少しずつ後ろに下がっていく。この「先頭を走る」から「伴走する」への引き際を見誤らないことが、自走する場を育てるコツです。

参加者は、みんなが同じ熱量で関わるわけではありません。関わり方には濃淡があり、それぞれに役割があります。大切なのは、全員を「発言する側」に引き上げようとしないこと。それぞれの居方をそのまま認めたうえで、一段だけ関わりが深まるきっかけを、そっと用意します。

関わり方ふるまい運営がそっと用意すること
見て楽しむ投稿はしないが眺めている読むだけで面白い投稿・企画
反応する「いいね」や短い一言を返す気軽に押せる・答えられる問いかけ
発言する自分の話題や作品を投稿する丁寧に反応し、光を当てる
盛り上げる自ら企画し、仲間を巻き込む任せる。前に出て応援する

理想は、この階段を一人でも多くの人が、自分のペースで一段ずつ上っていくことです。とりわけ最後の「盛り上げる」層——自ら企画して仲間を巻き込んでくれる人が数人でも現れると、場は運営の手を離れて回り始めます。この人たちは、報酬で動いているわけではありません。「好き」を存分に語れて、それを喜んでくれる仲間がいる、という体験そのものが報酬になっています。だから運営がすべきは、そういう人が気持ちよく動ける余白を残し、前に出てきたら全力で応援することです。

テーマの絞り方についても、少し補足します。趣味・関心型で意外につまずくのが、「間口を広げすぎる」ことです。より多くの人に来てほしいと考えて、テーマをぼんやり広く設定すると、かえって誰も深く語れない場になります。「音楽が好きな人」より「昭和歌謡を語りたい人」、「アウトドア全般」より「ソロキャンプの道具にこだわる人」——このように、狭く、深く、思わず語りたくなるところまでテーマを絞るほど、熱量は濃くなります。狭めると人が減るように思えますが、実際は逆で、「まさに自分のための場だ」と感じた人が、遠くからでも集まってきます。広く浅い百人より、狭く深い十人のほうが、場は活きます。まずは尖ったテーマで濃い核をつくり、そこから少しずつ隣接する関心へ広げていく——この順番が、自走する趣味の場を育てる近道です。核となる熱量さえあれば、そこで生まれた合言葉や独特の空気が、他では真似のできない、その場だけの文化になっていきます。

熱量は、運営がつくるものではなく、参加者から生まれるもの。

盛り上げ役を運営が抱え込むと、いずれ息切れします。参加者が主役になれる場ほど、熱量は長く続き、自然な発言と交流が絶えません。ここで運営が心得ておきたいのは、「口を出しすぎない我慢」です。参加者の企画が自分の思う形と少し違っても、危ういと感じても、まずは任せて見守る。手を出して整えたくなる気持ちをぐっとこらえることが、参加者の「自分たちの場だ」という当事者意識を育てます。管理された場に熱は宿りません。多少のはみ出しや脱線こそ、自走する場の生きた証だと受け止めるくらいがちょうどよいのです。運営がいつまでも中心にいる場は、担当者が代わったり疲れたりした途端に火が消えます。目指すのは、運営がいなくても回る状態——参加者の中から自然に盛り上げ役が現れ、その人たちが新しい仲間を迎え入れていく循環です。そこまで育てば、場は運営の手を離れて、ひとりでに生き続けるようになります。

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株式会社AI Docks 代表 松永勇樹
株式会社AI Docks 代表取締役 /「コミュニティ2.0」提唱者

松永 勇樹

150名+ノーコードサロン運営
50件+場づくりの相談実績
多業種法人コミュニティ支援

150名以上が参加するコミュニティを自ら運営する現役オーナー。AIを活用し、中小企業のコミュニティを「立ち上げ」から「運営」まで一気通貫で伴走支援しています。集客・顧客定着・採用に効く"稼ぐコミュニティ"を、設計から収益化まで一緒に形にします。

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