第1部 なぜ今、コミュニティなのか Lesson 07 / 40

「うちには無理」という思い込みを外す

フォロワーがいない、影響力がない、うちの業種には向いていない——コミュニティをためらわせる三つの思い込みを、一つずつ外していきます。持たざる者こそ、コミュニティを武器にできます。

コミュニティの話をすると、多くの経営者が同じ言葉を返します。「うちのような小さな会社には無理だと思う」。フォロワーもいない、有名でもない、地方の目立たない業種だ——だから自分たちには関係ない、と。しかし、この「うちには無理」は、ほとんどが思い込みです。むしろAIが普及したいまの時代は、持たざる者こそコミュニティを武器にできる時代です。この章では、ためらいの正体である三つの思い込みを、一つずつ外していきます。

思い込み①「フォロワーや影響力がないと始められない」

まず最も多い誤解が、「たくさんのフォロワーや影響力がなければ、人は集まらない」というものです。たしかに、影響力のある人が大勢のファンを集めるコミュニティもあります。しかし、それは数あるコミュニティの一つの形にすぎません。コミュニティは「フォロワー数」から始まるのではなく、「テーマ」から始まります。何万人に届く発信力がなくても、「この指とまれ」と呼びかける共通の関心さえあれば、場は立ち上がります。

むしろ、最初は人数が少ないほうが有利なことも多いのです。少人数なら一人ひとりと丁寧に話せて、場の空気を自分たちの手でつくれます。「フォロワーを増やしてから」ではなく、「コミュニティをつくった結果、そこから信頼が広がってフォロワーが増える」という順番だってあります。影響力は、始める前の条件ではなく、続けた先に生まれる結果なのです。

ここには、多くの人が見落としている順番の逆転があります。SNSのフォロワーは「広く浅い」つながりで、数は稼げても、そのほとんどは商品を買うほどの信頼には至りません。一方、コミュニティは「狭く深い」つながりから始まります。数は少なくても、そこにいる一人ひとりが濃い信頼でつながっている。この濃い信頼を持った数人が、まわりに「あの場所はいい」と自分の言葉で語ってくれることで、はじめて健全な形でフォロワーや評判が広がっていきます。フォロワー数という「結果」を先に追いかけると、数は増えても中身のない状態になりがちです。順番を逆にして、まず少数との信頼を積み上げるほうが、遠回りに見えて確実なのです。実際、150名以上の月額コミュニティも、最初から大人数だったわけではなく、ごく少数のつながりから育っていきました。

思い込み②「うちの業種には向いていない」

次に多いのが、「うちの業種・商売には向いていない気がする」というためらいです。しかし、コミュニティはほとんどの業種で成立します。実際、映像制作、美容、コスメ、AI事業、腸活といった、まったく異なる幅広い業種で支援の実績があります。数十件の相談を受けてきて感じるのは、業種はてんでバラバラでも、抱えている悩みは驚くほど似ている、ということです。共通するのは、業種そのものよりも「解きたい経営課題があるかどうか」です。

「向いていない業種」という感覚の正体は、たいてい「教えられるほどの専門知識がない」という不安です。しかし、ここにも思い違いがあります。あなたが毎日の仕事で当たり前にやっていることは、お客様にとっては知らないことばかりです。たとえば、美容室のスタッフが何気なく話す自宅でのケアのコツ、飲食店の店主が語る食材の選び方、税理士が口にする領収書の整理の仕方。本人にとっては「こんなの常識」でも、受け取る側には十分な価値があります。コミュニティで交わされるのは、立派な講義ではありません。日々の現場から生まれる小さな知恵や、うまくいった話・失敗した話の共有です。むしろ、完璧に整った知識よりも、等身大の試行錯誤のほうが、人の心を動かし、参加者どうしの会話を生みます。「教えられることがない」のではなく、「自分の当たり前の価値に気づいていない」だけなのです。

思い込み実際のところ
フォロワーがないコミュニティはテーマから始まる。少人数ほど空気をつくりやすい
影響力がない影響力は始める条件ではなく、続けた先に生まれる結果
うちの業種は地味ニッチで具体的なほど「自分のための場だ」と刺さりやすい
教えられる知識がない日々の仕事の当たり前が、お客様には知らないことばかり

むしろ、ニッチで具体的な業種ほど「これはまさに自分のための場だ」と感じてもらいやすく、有利に働くことさえあります。派手さや幅広さは、コミュニティにおいては必ずしも強みではありません。狭くても深く刺さることのほうが、ずっと大切なのです。

思い込み③「小さい・地方だから不利」

三つ目は、「規模が小さい」「地方にある」ことを弱みだと感じる思い込みです。ここにこそ、時代の大きな追い風があります。かつてコミュニティ運営は、人手も予算もかかる重い仕事でした。だから、資本のある大企業や影響力のある人のものでした。ところが、AIの登場でこの前提が覆りました。告知や制作、分析といった作業の多くをAIが肩代わりし、限りなく少ないヒト・モノ・カネで場を運営できるようになったのです。

これは抽象的な話ではありません。実際に、自社のコミュニティ運営でもAIを日常的に使っています。案内文の下書きをAIに任せ、活動の記録を自動でレポートにまとめ、投稿の一部を半自動で用意する。かつてなら専任のスタッフが何人も必要だった作業を、一人でも回せるようになりました。ここで大切なのは、AIはあくまで裏方であって、主役は人だということです。作業はAIに任せ、人は関係を育てることに集中する。この役割分担ができると、少人数でも運営の負担に押しつぶされずに続けられます。むしろ、作業をAIで効率化するほど、人が直接顔を合わせる時間の価値が際立ちます。だからこそ、持たざる者――小さく、地方で、少人数の会社こそ、AIとコミュニティの掛け合わせを最も活かせる立場にいるのです。

持たざる者 小さい・地方・少人数 AI 運営コストを下げる コミュニティ 文脈・関係を蓄える 小さくても 選ばれる理由
図:AIとコミュニティを掛け合わせ、小さくても選ばれる理由をつくる

地方についても同じことが言えます。地方は「人がいない」のではなく、「人と人がつながる導線と、続けて集まる場が不足しているだけ」です。都市のような人流や広告予算がなくても、顔の見える距離で少人数が深くつながる場なら、むしろ地方のほうがつくりやすい。人間関係や紹介、評判の影響が大きい地域ほど、口コミが効き、つながるだけで小さな経済圏が生まれます。小ささや地方であることは、コミュニティにおいてはハンデではなく、尖った強みを出しやすい土壌なのです。

地方出身の立場から言えば、地方には「まだつながっていないだけの人」がたくさんいます。同じ関心を持ちながら、集まる場所がないために、お互いの存在を知らないままばらばらでいる。そこに小さな場を一つ用意するだけで、点在していた人たちが線でつながり、思いがけない広がりが生まれます。都市では埋もれてしまう規模の関心事でも、地方では「この地域で、これに関心がある人の集まり」というだけで唯一無二の存在になれる。競合がひしめく都市よりも、むしろ数少ないからこそ、一番手として選ばれやすいのです。「小さい・地方だから不利」という感覚は、都市の大きな成功例を基準にしているから生まれます。ものさしを持ち替えれば、それは強みに反転します。

持たざる者こそ、AIとコミュニティを武器にできる。フォロワーや規模ではなく、テーマと文脈から始まる。

「うちには無理」という言葉の多くは、事実ではなく、古い時代のイメージが見せる幻です。フォロワーがいなくても、有名でなくても、地方の小さな会社でも、テーマと、目の前の数人と、AIという道具があれば、自分たちのコミュニティは持てます。次のレッスンからは、そのコミュニティが成り立つ仕組みを、原理から一つずつ見ていきましょう。

目次にもどる(全40レッスン)
株式会社AI Docks 代表 松永勇樹
株式会社AI Docks 代表取締役 /「コミュニティ2.0」提唱者

松永 勇樹

150名+ノーコードサロン運営
50件+場づくりの相談実績
多業種法人コミュニティ支援

150名以上が参加するコミュニティを自ら運営する現役オーナー。AIを活用し、中小企業のコミュニティを「立ち上げ」から「運営」まで一気通貫で伴走支援しています。集客・顧客定着・採用に効く"稼ぐコミュニティ"を、設計から収益化まで一緒に形にします。

まずは、貴社にコミュニティが必要かを一緒に整理しませんか?

無料でコミュニティ診断を受ける/60分・オンライン