第6部 立ち上げと運営の実践 Lesson 34 / 40

運営が頑張りすぎない ―― 参加者と「ともに作る」

コミュニティのよくある失敗は、運営が頑張りすぎることです。主体的に関わる人を増やし、締め切りを決めて立ち上げ、参加者の声に寄せて軌道修正する——ともに作る運営の考え方を解説します。

コミュニティ運営でもっともよくある失敗は、意外に思われるかもしれませんが、「運営が頑張りすぎること」です。すべての投稿を用意し、すべての企画を回し、すべての反応を返す。責任感の強い人ほどこうなりがちで、そして例外なく疲れ果て、場が止まります。うまくいくコミュニティは逆です。運営が旗を振り続けるのではなく、参加者が主体的に動き出す状態を、いかに早くつくれるか。この「ともに作る」への転換こそが、続く場と続かない場を分けます。

頑張りすぎる運営は、なぜ続かないのか

運営者が一人で抱え込むと、場の活気はその人のエネルギー次第になります。運営者が元気なうちは回りますが、本業が忙しくなったり、気力が落ちたりした瞬間に、投稿も企画も止まります。しかも、運営者が何もかもやってしまう場では、参加者は「お客様」のまま受け身になり、自分から動く理由を持ちません。運営が頑張るほど、参加者は受け身になる——これは皮肉な悪循環です。

観点運営が抱え込む場参加者とともに作る場
動かす人運営者ひとり主体的に動くメンバーが複数
参加者の立場受け身のお客様場を一緒に育てる仲間
運営者が疲れると場が止まる参加者が回し続ける
成長の仕方運営者の限界が場の限界関わる人の数だけ広がる

目指すのは、運営者がいなくても回る状態です。そのためには、運営が主役の座を降り、参加者が主役になれる余白を意図してつくる必要があります。

「やりたい」を支え、主体的な人を増やす

ともに作る運営の中心は、参加者の「やりたい」を潰さずに支えることです。誰かが「こんな企画をやってみたい」と言い出したとき、運営がすべてを取り上げて代わりにやってしまっては、その人の主体性は育ちません。かといって、丸投げして放置すれば、慣れていない人は途中でつまずきます。ちょうどよいのは、その中間です。運営が土台を用意して企画を回しやすくしてあげ、「分からないことだけ聞いてね」と伝えて、あとは本人に任せる。この距離感が、人を主役に育てます。

一人の参加者が主体的に動き出すと、その姿を見た別の参加者も「自分もやっていいんだ」と続きます。こうして主体的に関わる人がじわじわ増えていくこと——これが、ともに作るタイプのコミュニティにおける最大の競争力です。運営者一人の熱量には限界がありますが、主役が増えていく場には、限界がありません。関わる人の数だけ、場は豊かに広がっていきます。

ここで一つ、大切な誤解を解いておきます。「運営が頑張りすぎない」とは、「何もしないで放っておく」ことではありません。この二つはまるで違います。放置された場は、参加者が動き出す前に静まり返り、そのまま消えていきます。ともに作る運営が本当にやっているのは、放置ではなく「余白のデザイン」です。運営がすべてを埋め尽くすのでもなく、すべてを手放すのでもなく、参加者が入り込める隙間を意図して残しておく。たとえば、答えをすぐに出さずに「みなさんはどう思いますか」と問いを投げる。完成した企画を配るのではなく、「こんなことをやってみたいのだけど、一緒に考えてくれる人はいますか」と余白ごと差し出す。主役になれる隙間を残すこと自体が、運営の仕事なのです。頑張らないのではなく、頑張りどころを「自分がやる」から「人がやりたくなる場を整える」へと移すのだと考えてください。

具体的には、最初はごく小さな役割から任せていくのがコツです。いきなり大きな企画を丸ごと預けるのではなく、「今日の話題を一つ出してもらう」「この投稿に感想をつけてもらう」といった、負担の軽い役割から始める。小さな役割をやり遂げてもらい、それを運営がきちんと感謝し、みんなの前で認める。この積み重ねが、その人の「またやりたい」を育てます。任せる範囲は、相手の手応えを見ながら少しずつ広げていけばよいのです。

完璧に決めきらない ―― コミュニティは生き物

ともに作るのなら、最初にすべてを決めきってはいけません。多くの人は「完璧な設計図」を用意してから始めようとしますが、実際には、走り出してから必ずどこかで軌道修正が起きます。最初に「これで行こう」と決めた方向性が、参加者の反応を見るうちに「本当に求められているのは別のことだった」と分かる——これはうまくいく場ほど普通に起こることです。

まず決める コンセプト+数十人 走り出す 締め切りで立ち上げ 寄せていく 声を吸い上げ軌道修正 生き物として育て続ける
図:決めきらず、参加者の声に寄せながら育てる

ですから、最初に固めるのは二つだけで十分です。コンセプト(何のための場か・どんな方向性か)と、最初の数十人。中小企業にとっては、この最初の少人数を集めきることが、立ち上げで最も大事な仕事です。あとは、実際に参加した人たちが何をやりたいか、どんなことを考えているかを丁寧に吸い上げ、そこへ場を寄せていく。コミュニティは設計図どおりに建てる建物ではなく、育てながら形が変わっていく生き物だと考えてください。この姿勢があれば、途中の軌道修正も「失敗」ではなく「当たり前の成長」として受け止められます。

締め切りを決めて立ち上げる

最後に、立ち上げで決定的に大事なことを一つ。それは、締め切りを決めることです。「完璧に準備できてから始めよう」と考えていると、コミュニティはいつまでたっても立ち上がりません。準備には終わりがなく、不安も尽きないからです。多くの支援の現場で痛感してきたのは、リリースやローンチ、あるいは説明会・セミナーの開催日といった「締め切り」を先に決めてしまうことが、立ち上げを実現させる何よりの原動力になる、ということです。

締め切りがない締め切りを決める
準備いつまでも終わらないその日に間に合う分だけ整える
行動先延ばしになる最初の声かけが始まる
結果いつまでも立ち上がらない不完全でも走り出せる

日付が決まれば、逆算して「では最初の人に声をかけよう」と体が動き出します。開催日という現実の締め切りが、迷いや不安を行動へと変えてくれるのです。完璧を目指して動けないより、不完全なまま走り出して、参加者とともに直していくほうが、はるかに早く良い場になります。

締め切りの決め方にも、ちょっとした工夫があります。おすすめは、「自分だけが知っている目標日」ではなく、「他人に約束してしまう締め切り」にすることです。頭の中で「来月には始めよう」と思っているだけでは、いくらでも先延ばしできます。ところが、「◯月◯日に説明会を開きます」と外に告知してしまえば、もう後には引けません。人に約束した締め切りには、自分との約束にはない強制力が働きます。さらに、その日を「完璧に仕上げる日」ではなく「不完全なまま人前に出す日」と最初から割り切っておくこと。立ち上げの当日に足りない部分があるのは当たり前で、むしろその足りなさを参加者と一緒に埋めていく過程こそが、場への愛着を生みます。準備が9割整うのを待つより、6割で走り出して、残りを走りながら仕上げる。そのほうが結果的に早く、そして良い場になります。

運営が頑張りすぎず、参加者とともに作る。完璧に決めきらず、締め切りで走り出し、声に寄せて育てる。

コミュニティは、運営者が背負う荷物ではなく、参加者と一緒に育てる畑です。主体的に関わる人を増やし、締め切りを決めて小さく走り出し、生き物として軌道修正していく。この構えができれば、運営はぐっと軽くなり、場はあなた一人の力を超えて広がっていきます。次のレッスンでは、走り出した場に入ってきた新しい人を、どう迎え入れて定着させるかを見ていきます。

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株式会社AI Docks 代表 松永勇樹
株式会社AI Docks 代表取締役 /「コミュニティ2.0」提唱者

松永 勇樹

150名+ノーコードサロン運営
50件+場づくりの相談実績
多業種法人コミュニティ支援

150名以上が参加するコミュニティを自ら運営する現役オーナー。AIを活用し、中小企業のコミュニティを「立ち上げ」から「運営」まで一気通貫で伴走支援しています。集客・顧客定着・採用に効く"稼ぐコミュニティ"を、設計から収益化まで一緒に形にします。

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